宝蔵 @下御霊神社


京都の建築専門書店「大龍堂書店」に行く途中、下御霊神社を通りがかった。ここの神社の土蔵は長い間修理もされていないようで、もうボロボロに荒れ果てている。しかし、おそらく京都で一番見事な漆喰彫刻が施されている蔵として、僕が以前から注目している建物だ。
京都の左官技術は特にお茶室などに使う土壁については相当洗練されていて、高度な技術の蓄積があるのだが、こういった装飾的な表現を避ける土地柄のためか漆喰の彫刻については本当に事例が少ない。漆喰彫刻で一番有名なのは「伊豆の長八」として知られる入江長八であるが、あまり有名ではないけれど富山県の小杉町出身の竹内源造の仕事、特に名越家の土蔵の双龍の彫刻は物凄い迫力だ。
京都ではこうした漆喰彫刻を見かけることはほとんどないのだけれど、この下御霊神社の土蔵はかなりレベルの高い仕事がしてあると思う。僕の個人的な想像ではあるのだけど、この神社の漆喰彫刻は京都の職人さんの仕事ではなく、腕試しに日本を渡り歩いていた腕利きの渡り職人がふらっと立ち寄って仕上げた仕事なんじゃないかなあと、勝手に想像している。

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3 Comments

  1. これはすごいですね。こんなの知りませんでした。
    実は昨日、伊豆の長八美術館に行ってきたところです。
    入江長八の仕事の多く江戸にあり、建物とともに戦争で失われてしまったそうですから、美術館にはどちらかというと小さく細かいものが多かったような気がします。
    漆喰彫刻は江戸とかの方が多かったんですか?

  2. morikazu

     東京(江戸)の漆喰彫刻って、あんまり思い当たらないですよね。戦災のせいかもしれませんが、どちらかというと地方都市(川越や角館など)の方が多かったのでは?
    江戸時代は幕府の監視があったので(特に江戸では)庶民が豪奢な装飾付きの普請をする事は無理だったと思いますし、明治以降の東京ではそうした努力は洋風建築へ向けられていたはずです。
     明治以前以後いずれにせよ、権力、文化の中枢から外れた地域でピンポイントで発達した超局所的文化なんじゃないかなあ。

  3. 下御霊神社にそんなにスゴイものがあったんですね!全然知りませんでした。というより、素人では全く気づかないでしょうね。私も伊豆の長八美術館には行ったことあります。鏝絵のこと、そこで知りました。実は下御霊さんは母の実家の大家さんです。今度見てみます。

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