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「TOWER」の物語

左官職人A氏は焦っていた。
この街ではどんどん古い家屋が解体され、古い木も土も廃棄物として処分されている。
一方で、土壁に適した質の良い土が少なくなっている。
古い家屋を解体すれば強くて粘りのある壁土が山のように採れたが、
彼にはそれを保管する場所がなかったのである。

他の左官屋も、同じような理由で目の前の宝の山を見送っていた。
プレファブ住宅全盛の今は苦境の中にある左官産業であるが、
近い将来土壁が見直されるのは間違いない。
しかしそうなったときに、土がないのだ。

彼は廃棄された壁土を、水を混ぜて練り返し、日干しレンガを作りはじめた。
そしてそのレンガを積んでTOWERを建て始めた。
柱、梁や建具、階段は同じく解体された家屋のものを使った。
それらは違う建物のものでも同じ規格で作られていたので、ほとんど加工せずに使うことができた。

建物によって土の色が違うのでTOWERの壁は様々な色が積み重なり、
さながら土の博物館のようであった。
彼が意図したわけではなかったが、日に日に高くなるこの建物の広告効果は抜群であった。
見学者は後を絶たず、日曜日毎に開かれる土壁教室も盛況を博した。

日干しレンガは砕いて水を加えれば、再び壁土として使うことができる。
土壁が見直されたときに、このTOWERを解体して壁を塗ろうと彼は考えていた。
土壁教室の盛況をよそに、未だその日は訪れていない。

Even though materials in good quality for houses are hard to get,
scrapping the old houses are in rush in this town.
This is the TOWER piled on mud-brick made from disposed mud wall.