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4/26に大阪のアーキフォーラムで講演をさせていただきました。ご来場下さった方、どうもありがとうございました。
この機会がなければ、ずるずると日本の生活に馴染んでしまったところを、スペインでの一年間の体験をまとめるいい機会になりました。お声かけ下さった、アーキフォーラムの方々にも感謝、です。

講演ではまず、スペインに行くまでに僕の手掛けた物件をさらっと紹介し、それからスペインやその周辺諸国で見た現地の左官技術の解説、最後にそれらを知ったことで可能になるであろう今後の自分の取り組みの展望、という流れでお話をしました。
その話の中で、コンクリートやスティールによって可能になった世界のどこにでも成立する建築様式としての「インターナショナル・スタイル」を、「マジョリティ・インターナショナル」と位置づけ(それを支える建築技術を含めて)、その対概念として「マイノリティ・インターナショナル」という言葉を使ってみました。

世界のあちこちの建築を見て歩いていると、地球上の遠くはなれた土地でありながら、とてもよく似た技術や様式が存在することがあります。たとえば講演で紹介した「カタランボールト」工法は、世界的に見ればまったく少数派の特殊な技術でありながら、スペイン、アメリカ、ウルグアイ、キューバなどインターナショナルな広がりを持つ技術です。

僕がここ数年興味を持ってきた左官技術で作る超薄膜シェル構造体などは、「世界のどこにでも適応可能な」技術(マジョリティ・インターナショナル)ではないのですが、「世界のどこかで適応可能な」技術(マイノリティ・インターナショナル)なのだと思います。

そしてそうした探求を続けることが我々の時代の建築文化の層を厚くし、全体として豊かなものにするはずだと思っています。現代のスター建築家のように世界のあちこちのメジャーな都市に建築を量産するのではなくて、ネパールの山奥の村、とか南太平洋の孤島、とかにぽつぽつと手掛けた建築がある、マイノリティ・インターナショナルな建築家ってもありだと思うんですよね。

5/10は京都工芸繊維大学で京都の左官職人の佐藤ひろゆきさんが博士号を取得した記念講演会があったので出かけてきました。京都だけでなく、各地の左官職人さんが沢山聴講に駆け付けていて、左官職人の同窓会のような状態になっていました。佐藤さんの博士号取得は、職人にとっても励みになる画期的な出来事なのだと思います。

会場では久しぶりに会った三重県の左官職人松木さんとタデラクト(モロッコのしっくい)についても少し情報交換。日本国内でも一年前位から、ドイツの建材メーカーがタデラクトを販売はじめたらしいんですね。日本の左官職人の間でも、徐々に知られてきている様子。

5/13はエクスナレッジ社の大菅編集長が、静原の事務所へ。国内建築系メディアの、記念すべき静原ご来訪第一号!これからもこの京都市内のど田舎に、がんがん人が来てもらえるようにがんばらないと。さっそく夏から秋にかけての出版物の記事や取材の企画の相談をいくつかいただきました。