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京都市中心部の路地奥の町家を改修した住宅である。建てられた頃の用途は不詳であるが、数年前まで機織りの職人が作業する工房として使われていた。寝室などとして用いる畳敷きの居室を最小限にとどめ、多数の来客も訪問可能なように大きな土間空間を設けた。

町家の土間を京都では「走り庭」と呼ぶように、土間は町家内部における準外部空間(ニワ)であると同時に、道路や路地から地続きの準公共空間である。ここでは旧来の町家の平面形式の主要素でありながら、現代の改修によって失われがちな「土間」を、建築の内部空間における公共空間として再定義し、むしろ拡張させることで、町家を単なる「住宅」という機能に留まらず、より公共的な場へと進化させている。

ファサードの格子は、もとの町家には無かった要素だが、路地から室内への視線を制限しつつ通風を確保し、空調や給湯器の室外機を隠蔽するために幅/奥行き/間隔を伝統的な町家のそれから変化させ、ファサード全体を覆った。

平面や格子という形式を現代や未来に向けて進化させる一方で、改修に用いた工法については、あえて原始的な工法への遡及を行っている。たとえば土間工法では、土を固めただけの原始的なタタキ工法を用いた。新規土壁部分には荒壁や大直し塗り、中塗りなど、本来は下地として用いられていた層をそのまま可視化している。

建物の古さだけでなく、町家という形式の歴史や、土壁などの工法の歴史的な進化の過程をも感じられる空間とすることで、人間の太古の記憶に遡るような射程の長い「時間」の設計を試みている。


御所西の町家 Machiya House in Gosho-nishi


施工

 エクセル住宅建設  担当/藤居武司 岸本周治 山内裕二郎

 大工 熊谷工務店 担当/熊谷良生 柴田雅嗣 楯孝義

 左官 中井左官工業 担当/中井稔二

 解体 甍建設 担当/大橋幹生

 塗装 岩本建装 担当/山口隼人

 板金 日下部ルーフテクト 担当/日下部智晃

 瓦 長本瓦店 担当/長本俊植

 建具 足立建具店 担当/足立孝之

 タイル 三光タイル 担当/安藤晴康

 畳 渡辺畳店 担当/渡辺靖英

 鉄骨 庄司鉄工所 担当/庄司寿男

 サッシ・ガラス 三永工業 担当/水谷信治

 材木 近治材木店 担当/神田一美

 電気 堀部電工 担当/野口清秀

 水道 アクアライフ 担当/ 田村正茂

 ガス キョウプロ 担当/中村康夫 古川茂昭

 土壁 宮部左官 担当/宮部友之

 土間 久住左官 担当/久住誠 田中らん

 造園 佐野造園 担当/佐野健介


写真/表恒匡


設計

森田一弥建築設計事務所

担当/森田一弥 木村俊介