kyoto city : 2002

京都の古い街並みが残る一角の町家を改修し、店舗兼住居として再生しました。

伝統的な町家は一階が暗く陰気になりがちなので、まず二階の中央の部屋をなくして吹き抜けとし、階段、ブリッジと天窓を新設しました。天窓からの光は階段とブリッジを透過して一階まで届き、時の経過とともに床をうつろいます。既存の建物の一階の床はすべて撤去して、レンガ敷きの土間としました。

建物の既存部分には、極力この建物が建てられた当時と同じ材料・技術を用いて再生しています。そのために他の場所で廃棄されたモノ(建具、照明器具、板材、壁土など)を可能な限り使用しています。空間的、または機能的に新しい要素には現代的な大量生産された材料(金属製の階段や亜鉛鉄板の腰板、床のレンガ)を用いています。

道路工事現場で廃棄されていた赤土を使った土壁では、新旧の左官技術を使い分けています。外壁および二階の書斎・寝室には伝統的な技術に則った仕上げを、一階の店舗部分と吹抜・トイレ内部には伝統的な技術を下敷きにしながらも新しい試みの仕上げを施しています。

既存部分にはこの建物が建てられた当時のもの、新しい要素には現代のもの、と技術や材料を意識的に使い分けることで、建物が経てきた時間の奥行きを表現しようとしています。

名称:ラトナカフェ Ratna Cafe
所在地:京都市中京区

設計:森田一弥、山田協太
施工管理:森田一弥、山田協太
施工:木・設備工事/和田工務店、左官工事/井上良夫、森田一弥、鉄工/角田鉄工所、塗装/山田協太、吉村耕一郎、造園/水谷馨、松崎大輔、石川知海、家具/戸田直美(potitek)

建物概要:木造2階建
建物用途:店舗兼住居
面積:敷地面積/62.2平米、建築面積/52.4平米、延床面積/82.2平米
工期:2002年02~05月

標準仕上:
外壁:大津仕上げ、大津磨き仕上げ、鉄粉入り赤土水ごね仕上げ
内壁:亜鉛鉄板腰板張り、赤土と土佐漆喰のハンダ藁すさ洗い出し仕上げ、赤土水ごね仕上げ、赤土と土佐漆喰ハンダ桐生砂洗い出し仕上げ
床:土間コンクリートの上レンガ敷き
天井:既存野地板現し
柱梁:古色仕上げ(松煙、弁柄、柿渋塗布)