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その後、バードハウス展は無事に終了し、その後の出展者の懇親会もとても楽しい会となりました。会場に来てくださった方々、出展に声をかけていただいた畑さん、牧野さんに感謝、です。

今回はモロッコ漆喰「タデラクト」を自分の手で仕上げてみる、という経験ができたことが一つの収穫だったのですが、もう一つの大きな収穫は制作プロセスで生まれた「形のイメージ」とその形を合理的に成り立たせるための「制作の技術」、そして「素材の性質」が一つの環のようにつながって、お互いがお互いの特徴を引き出し合うような関係の中に作品を位置づけることができた、ということのような気がしています。


形のスタディは最初は針金を曲げてつくった模型で行っていました。

そのイメージのもとにはバルセロナのアントニオ・ガウディ設計「カサ・ミラ」の屋上の煙突の形がありました。この表面も、顔料で着色したしっくい仕上げになっています。
ただ、先ほどの針金模型は形のスタディには向いていますが、実際の制作方法としては色々と問題があります。当初は模型の制作方法の延長で、スチールのフレームで作った形に金網を貼ってモルタルを塗ろうと思っていたのですが(ゲーリーの建築はこの作り方ですね)、鳥かごのスケールでは、スチールのフレームを正確に曲げ加工し、しかもそれを変形しないように保つのが至難の業です。発泡スチロールを削りだしてモルタルの下地を作れなくもないですが、あまり建築的な作り方ではないのでそれはやりたくない。

そこで考えたのが薄い面材を積み重ねて立体を立ち上げ、左官の下地にするという積石造の考え方。よく見るとカサ・ミラの煙突の形も複雑な立体でありながらも、水平方向の断面形状は常に単純な多面体で、それが立体化してできていることがわかる。それはつまり、これをつくった職人さんにとっても墨の出しやすい、つまり作りやすい形だった、ということです。

加工のしやすさから下地の素材はスチレンボードがいいだろうと考えていましたが、モルタルが下地に接着するには断面に凸凹があり加工もしやすい段ボールがいいだろうと思いつき、「段ボール下地工法」が生まれました。いつかこの工法で人間の使う建築も作ってみたい。中に入る鳥や人間たちにも居心地が良さそうだし。
展覧会後の懇親会でもその話題でもちきりだったのですが、一年後どのバードハウスが一番人気か、ものすごく気になるところです。