福井市で今秋に開催されている「フクイ夢アート」の一環で、福井駅前に福井県産の竹と土を使ってインスタレーション制作を行いました。僕と左官職人の久住有生氏、福井大と福井工大の学生たちと一緒に三日間かけての制作作業です。

本体作業に先立って、福井市近郊の一乗谷の竹林で学生と市役所の方、朝倉氏遺跡保存協会の方々の協力で伐採作業を行っていただきました。扱いやすい真竹が見つかると良かったのですが福井県内ではマダケはほとんどなく、太くて肉厚の孟宗竹を伐ることになり、大変な作業だったそうです。またその竹を割る作業を毎晩続けてくれた、建築学生の皆さんには本当に感謝です。そうして苦労して手配した竹が現場に運び込まれました。青い竹のいい匂いがします。

今回のインスタレーションは日本の木造建築の土壁と同じように、竹を縦横に編んでつくった下地に土を塗って制作しました。ただ、日本建築の常識である平らな面でなく、あえて曲面だけで出来た土の造形を作ろうと考え、三次元に編んだ竹の下地を制作することに。そこでまず竹を丸く曲げて固定していきました。

固定した円形の竹を水平にして、長い縦の竹に針金で固定していきます。

一日目で、敷地全体に五つの竹の輪郭が立ち上がりました。

翌日は、水平の竹を一定の間隔で固定していく作業。一つ一つの大きさが違うので、非常に手間がかかる、根気のいる作業です。手前の脚立の上にいるのが久住有生氏。人気者の彼には、ファンだという女性や若い左官職人さんからちょくちょく声がかかります。

二日目が終わった状態。

竹の内側には冬の積雪や強風で倒れないよう、内側に固定用の筋交いが入れてあります。

ここは福井駅前の古い商店街の一角にある空き地、将来的には取り壊されて再開発される予定の敷地の一部です。かつての賑わいが失われつつある、現代日本の典型的な駅前商店街に、日本建築の壁工法を応用した見慣れない土の塊が出現する、というのが企画者である福井市の方々と我々の共有するストーリーでした。

三日目の午前中は、縦の竹を固定する作業。横竹に比べて作業が断然らくちんです。

地面が汚れないようにビニールシートで養生して、午後三時から待ちに待った土塗り開始。 まずは福井県内の建材屋さんから配達してもらった土とワラを混ぜた荒壁土(泥コンとも言います)を現場に運びます。

久住氏の簡単な説明のあと、土塗り作業開始。いやあ、壁塗りはまさに「祭り」ですね。現場が一気に盛り上がりました。

運んでも運んでも、土がどんどん無くなっていきます。

最初は塗りやすい高さから塗り始めるのですが、低くなると途端に作業が大変になります。

壁の一番下の部分になると、作業はペースダウンしますが、みんなニコニコ顔で作業を進めています。

脚立に乗って、上の方の塗り作業も徐々に進めていきます。

ここ数日、何事が始まるのかと興味津々だった通行人の方々も、この壁塗り時は皆さん作業に釘付け。特に年配の方々は、この竹下地と荒壁塗りには郷愁をそそられるものがあるらしく、しきりに懐かしがっておられました。 子供の頃に手伝いで実際に土を塗ったことがある人も多く、「あの部分の竹は間隔が大きすぎるんじゃないか」とか「竹が太すぎるんじゃないか」とか、色々と厳しいダメ出しもされたり。

その後、無事に荒壁塗り作業も終えて、夜8時頃に打ち上げに繰り出しました。福井大、福井工大の学生有志の皆さん、福井市の方々、お世話になりました。 このインスタレーションは、久住氏によって「土の依代(よりしろ)」と命名されました。さすがのネーミングです。この土地で風雪に打たれて風化し朽ち果てていく様子を含めて、福井市の方々に見ていただけたらと思っています。