9月24日に行われた、丹波の篠山市で久住章氏を講師に行われた、黒漆喰磨きの研究講習会に参加してきた。マラケシュの光る漆喰をはじめ世界には光沢がある壁を造る技術がいろいろあって、それに執念を燃やす職人達がたくさんいるのだが、この集まりも日本で光沢のある壁を塗ることに取り憑かれた人々の集まりである。なぜ、「光沢のある壁」というテーマにここまで人間が引きつけられてしまうのか、不思議で仕方ないのだが、理由はともかくこの楽しさはこんなサイトがあることでも十分にお解りいただけるとおもう。

会場風景。参加者はそれぞれ土を塗ったパネルを持ち込んで、黒漆喰磨きに挑戦する。

材料の調合。前日に造った材料を当日もう一度、微調整する。

鏝で材料の配合を再確認する久住章氏。

下塗り漆喰を塗りつけたあと、中塗り漆喰に塗りつけ。材料が黄色っぽいのは地元の土を漆喰に混ぜているから。これは伝統的な黒漆喰の施工方法とは違うのだが、現代的なボード下地にでも施工できるよう、より進化した工法を模索してのこと。

塗りつけ後は、平にならす「こなし」作業、その後表面の密度を上げていく「おさえ」作業をおこなう。

表面の状態が適当になったら(これは言葉では説明できない)、油墨入りの黒い上塗り漆喰を塗りつける。


均等に塗りつけ後は、同じく「こなし」「おさえ」作業を行う。だんだん表面に光沢が出てくる。

表面が堅くなって鏝が当たらない状態になったら、表面に「砥の粉」を打ってスポンジで拭き取り、表面に一時的に水分を呼び戻してもう一度、磨き鏝で全体を押さえる。すると、黒色の「むら」が無くなり、表面の色が均一にそろってくる。

色がそろったら、表面の水分を発散させてさらに光沢を出すために、毛の長いビロードで表面をなでる作業を繰り返し行う。

参加している職人さんは全国から集まっているが、それぞれの道具箱を観察するのが楽しい。だいたいこういう仕事に熱中する職人さんは凝り性なので、既製の道具箱なんか使わずに、自作の道具箱を携えてやってくる。材料に凝ったり、使い勝手がいいように小さな工夫がしてあったり。

会場には鏝を造る鍛冶職人さん達も来ていて、彼らの造った道具が並べられている。彼らは毎回、職人さん達からああしてほしい、こうしてほしいというナマの要望を聞き、職人はさらにそれを使った感想を伝え、技術を支える道具もこの場でどんどん洗練されていく。お互いにとってこういう場所はとても貴重だ。

最後に、久住氏によるまとめの意見交換会。久住氏が、今回用意した漆喰の配合の意図するところ、実際に施工した感想などを挙げ、参加した職人さんからも色々な意見が飛び交う。「これが正しいやり方ですよ」というのを一方的に押しつけるのではなく、あくまで「これは一例ですよ」というスタンスで自分の考えをみんなに伝え、それぞれが自分の創意工夫でさらに技術を進化させる・・・というのがこの研究会のすばらしいところ。
自分の仕上がり具合は・・・光沢は出るには出たのですが、傷が入ってしまっていたり、光沢にむらがあったり、表面の質感が揃っていなかったりと、まったくダメでした。ただ、こうして自分が一緒に手を動かすことで、その技術の「勘所」のようなものを共有できるのはとても良いことだと思うので、また懲りずに参加します。もちろん次回はもう少し綺麗に仕上げられるように頑張らないと。