*
6月14〜18日にかけて中国内モンゴル自治区オルドス市に左官工事の技術指導に行ってきました。サンプルを多数制作した昨年10月の出張に続いて二回目の訪問です。
通称「チーム沙漠」の前田さん、河村さん、國廣さんとの4人で早朝の北京空港からバオトウ空港へ1時間のフライト。そこから車で1時間弱でオルドス市の砂丘の中にある現場に到着します。
沙漠の中にドーンと現れるホテル。前回は基礎だけだったのが、客室部分のボリュームはほぼ立ち上がっています。
上から見ると蓮の花のような形の幾何学的なプラン。鉄板で基礎の周囲の砂を固定しています。
まずは現場監督さんと前回つくったサンプルと今回持参した左官の資料を見ながら打ち合わせ。
現場を確認後、バオトウ市に出て建材屋さん街で作業に必要な工具の買い出し。左官鏝も、作りは粗いですが何とか使えそうなものを選んで購入。日本からもある程度道具は持参していますが、現地で入手できるものを前提に仕上げを考える必要があります。
翌日、現場で沙漠の砂と糊などを調合して、職人さんの前で作業を実演してみる。
すると、中国人の「抹灰工」と呼ばれる内装職人の一人が、試しに作業をやり始めた。これが結構うまくて鏝さばきもサマになっている。
日本人の左官職人は現場を汚さず材料を落とさないように丁寧に塗るのだが、彼はボトボト材料をこぼしながらも豪快に材料を塗り付けていく。
日本では材料を均一に塗り付けて鏝で平滑に仕上げるのだが、彼はとにかく壁に材料を塗り付けて、鏝で余分な材料をこそぎとりながら壁を平滑にしていく。
そうした細部の違いはあっても、早くて上手い。
それなら、ということでサンプルルームの一つを彼と一緒に仕上げてみることにした。
鏝で平らにしただけだと、隣にある板壁の荒々しさに対して質感がおとなしすぎるので、先日買ってきた櫛のような道具で、急遽表面にパターンを付けてみる。
ひと仕事を終えて、彼と一緒にタバコの一服。職人のコミュニケーションは世界共通ですな。普段はタバコは吸いませんが、こういう時に勧められるタバコは断らないのが流儀。彼らは兄弟で妻子を故郷に残して四川省から出稼ぎにきているという話を聞きました。現場監督は客家出身、監督助手の女の子は雲南省の少数民族の出身だったり、こうした大きな現場には中国国内とはいえ色んな地域から人材が集まってきています。
こうして現地の職人さんでもある程度我々のイメージする仕上げを実現できそうな目処がつきました。ただ、一緒に作業した彼は施工会社の中でも腕利きの職人のようなので、こうした人材がどれくらい集められるかが、今後の鍵になってきます。
翌朝現場に行くと、さっそく大工さんが壁の一部を豪快に傷つけていました。日本でもよくあることですが、このあたりの配慮の周知徹底も課題の一つ。
あとは水溶性のセルロースで固めている砂壁の耐水性の問題がホテルの管理会社から指摘される。有機溶剤系の接着剤を塗布すれば確実なのだが、沙漠の乾いた砂の色が湿った砂の色に変わってしまうので、何とか避けたいところ。色々と接着剤の材質を変えて試験して、変色の問題と耐久性の問題の適当な落としどころを見つける必要がありそうです。
設計チーフの前田さんの書く、現場の悪戦苦闘を伝わえる現場ブログはこちら。
Matt
Super Awesome! I can’t ready any of it, but the photos are amazing. Especially the 2nd to last one. Someday, you will have to tell me more about this project.