*
リスボンでも2日ほどかけて現代建築を色々と見て回る。ポルトからの列車を降りたオリエント駅は、カラトラバの設計。
98年のEXPOを機に整備された駅で、プラットホーム上の屋根だけじゃなくて、大きな吹き抜けを持つプラットホーム下の駅全体がカラトラバ特有のアクの強い空間となっている。
アルヴァロ・シザのEXPO98ポルトガルパヴィリオン。両端の壁から極太のケーブルで吊られているコンクリートの屋根はスパンが65mで厚みがわずか20センチ、遠くから見ると布が吊られているように感じるくらいの薄さだ。
屋根の下の空間は、ドカーンと何にもない空間が広がっていて、ちょっと体験したことがない空間だ。寒い冬ということもあって、屋根の下には人影もまばらだったが、祭りのための空間の日常としてはこれでいいのだろう。
屋根と壁の間には隙間があって、ケーブルの間から光が差し込む。
壁面には全面にアズレージョが。ポルトの駅と同じく一枚一枚がふぞろいで色ムラがある。その中の一枚には工場の名が入っていた。
シザのパビリオンの近くにある、リスボンの建築家カリーリョ・ダ・グラサによるパビリオン「海の知識館」。
パティオに沿ってあがるスロープのアプローチ。
同じくカリーリョ・ダ・グラサによる「社会コミュニケーション学校」をたづねる。リスボン北西部の丘の上に、白い面で構成された印象的なファサードが立ち上がっている。
リスボンの若手建築家アイレス・マテウス兄弟による新リスボン大学校舎Rectory of Universidade Nova de Lisboa。「面」で空間を構成する、というデザインの特徴が見受けられるのはカリーリョと共通していて、「ボリューム」で構成する(ように感じられる)シザとは同じ白い印象の建物でも内部空間での体験はずいぶん違う。
その他、アイレス・マテウスの初期の作品である書店の内装だとか、志岐さんの案内でロシオ広場近くの震災で焼け落ちたままの内装の教会(これかなりおすすめ)だとか、グルベキアン美術館(ポルトガルの初期モダニズムの名品)だとか、サンタ・アポローニア駅横の旧倉庫を改修したレストランを見て回る。現地に知人がいる,というのは美味しい食べ物にありつけるという意味でも、知る人ぞ知る建築めぐりが出来るという点でも、ほんとうにありがたい。
おまけは、リスボン市内で見つけたモスク(イスラム教寺院)。イラクのサマラ風の螺旋状ミナレットと、イラン風の青いドームが組み合わさった面白い外観。見せてもらおうと中に入ると、応対してくれたのが日本語がペラペラのパキスタン人の男性。日本で十年くらい中古車の輸出の仕事をして、今はイスラムの神に仕えるためにここに寝泊まりしているという。10年ほど前に建てられたというから、これもいうなればイスラム世界の現代建築。イスラム教徒ならば、あらゆる国籍の人がここで礼拝したり、図書室を閲覧したり出来るらしい。
礼拝室のドーム。建物は鉄筋コンクリート造で、ドームはコンクリートの梁で壁から少し内側に、浮かぶように取り付けられていた。四角い平面の上に丸いドームをどうやって美しくかつ合理的に支えるかが、イスラム建築が長年追求して来たテーマ(スクインチ(Squinch)とペンデンティブ (Pendentive))であり、そこが見どころの一つなのだが、鉄筋コンクリートっていう技術はあっけらかんとこんな無茶な解決方法を実現してしまう。
モスク内観。中央の凹み、メッカの方角を示すミーラーブがイランのカッティングタイル張り(たぶん本当にイランの職人がつくっている)、両脇がトルコのイズニックの着彩タイル(これも本物)。
イランのカッティングタイルはモロッコの幾何学模様主体のデザインと違って、唐草模様などでもっと曲線が多いデザインになっている。信じられないかもしれませんが、これは一枚のタイルに描いた模様ではなく、それぞれの模様の形にノミでカットした、モザイク状のタイルです。
コメントを残す