取材@静原

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ここ一週間は、ほとんど静原で過ごしていました。いろいろと雑用はあるものの、まだ着工している現場があるわけでないので、スペイン出発前の怒濤の日々に比べると、とても落ち着いた日常。基本設計段階の二軒の住宅にもじっくり取り組むことができているので、この時期に設計を依頼して下さっている方は、時間をかけている、という意味ではすっごく「オトク」です。それに比例して案も良くなる、という単純なものでもないですが。。。そうなるよう、がんばります。

以前の事務所にいた頃は、それほど事務所への来訪者はなかったのに(むしろこちらから出かけていた)、静原に移ってから色々な方に来ていただけるようになりました。今のところ、不便だからこそ来客が増える、という目論見は成功しています。また、海外の学生の研修申し込みも毎月のようにあるのですが、こちらは残念ながら時期尚早と考えてお断りしている状態。はやくスタッフの受け入れ態勢も整えて、わいわいと設計に取り組めるようにしていきたい。

先日12日には、藤村龍至、山崎泰寛さんと編集者の伏見さんが今秋出版予定の書籍のインタビューのために静原までご来訪。藤村さんがインタビュアーで、自分の建築家としてのスタンスや考え方をいろいろとお話しさせてもらった。なぜ静原に事務所を構えるのかということ、左官というテクノロジーから学んだこと、ローカルに徹しながらインターナショナルであることをめざすこと、その根幹である「マイノリティ・インターナショナル」という考え方など。

「マイノリティ・インターナショナル」という言葉は、僕がスペインにいるときに「カタランボールト工法」というレンガ積み技術のことを調べていたのですが、その現代的な可能性を表現するために用いている言葉です。というのもカタラン(もしくはカタロニア)という名前の通り、この技法はスペインのバルセロナ周辺にしかないローカルな技術ということで付けられた名前なのですが、起源をさかのぼるとイスラム文化圏全体に広がっていた技術で、また20世紀には南北アメリカ大陸にも伝わっている、ものすごく国際的な広がりを持つ技術なのですね。

こうしたある意味特殊な技術は、鉄筋コンクリートみたいに世界中に多数派として広がる技術(マジョリティ・インターナショナルな技術)にはなりにくいですが、現代でもある条件下の地域ではものすごく有用な技術になり得るし、そうした技術の存在が結局は建築文化全体の層を厚くすることにつながっています。このようにマイノリティでありながら同時にインターナショナルである、といえるような存在は、音楽や美術、農業や工業、料理の世界でも見つけられると思うのですが、技術や素材に限らず、個人が世界と向き合うスタンスとしても、特に地方都市を拠点に活動するためには有効なはず、とそんなことをお話ししました。

藤村さんの活動はオランダにおられた4年ほど前から注目していて、今までもメールのやりとりは何度かさせてもらっていたのですが、今回が実は初対面。彼が提唱している設計論である「超線形設計プロセス論」や「批判的工学主義」についてなどこちらからお聞きしたいことも沢山あり、インタビューの合間に色々お考えを聞くことで、文章からは読み取れなかった論の背景、「社会」に対するスタンスの違い、などが明らかになってきたのがとても楽しかった。

それに対して「森田さんの設計プロセスは?」というど真ん中の質問に対し、こちらは不覚にも虚をつかれて「いや、、普通ですけど、、、」としどろもどろに。そもそも誰かのもとで設計を学ぶことなく、つまり自分の設計プロセスを相対化するすべのないまま、手探りで進んできた自分のオリジナリティについて、もう少し客観的に見つめ直す必要があるなあと痛感。今回の企画は同世代の若手建築家のインタビュー集になるらしいので、自分の立ち位置を知る上でもとても楽しみな企画です。

京都では、同じ建築業でも建築家より職人とのつきあいが多い自分にとって(これはこれですばらしい環境ですが)、同世代の建築家と話すことでお互いの考え方を相対化できる機会というのはなかなか無いことなので、こうした機会は本当にありがたい。また、そうした場を意識的に継続的に作り続けようと努力されている藤村さんとは今後も色々なところでお会いする機会があるように思うし、その場に対して刺激を送り続けられる存在でいなくては、と考えさせられた日でした。

4 Responses to “取材@静原”

  1. 吉村 より:

    マイノリティ・インターナショナル。良い言葉ですね。同時に大変魅力的な言葉でもあります。森田さんが登場するという、そのインタビュー集が早く読みたいです。

  2. ユーイチ より:

    お久しぶりです。
    京都に戻って新にバージョンアップした様子が良く伝わってきます。
    素材、工法、ディーテールも重要ですが、それを越えたところに真のデザインは存在すると思います。
    バルセロナでの体験を肥やしにしてマイノリティ・インターナショナル頑張ってください。
    京都発の『クリティカル・リージョナリズム』を期待しています。

  3. もりかず より:

    吉村さん
    お久しぶりです。
    ここしばらくの京都は酷暑の毎日で、さわやかなバルセロナの夏が懐かしいです。
    マイノリティ・インターナショナルは僕が興味を持ったローカルな技術を指すと同時に、自分がローカルな場所にいながらインターナショナルな場に建築を発信していくための、指針のようなものでもあります。
    日本に帰国される際は、ぜひ京都まで足を伸ばして下さい。
    それでは、よいバカシオンを!

  4. もりかず より:

    ユーイチさん
    ご無沙汰しています。
    コメント有り難うございました。
    素材、工法、ディーテールを越えたところに真のデザインは存在する、まさにその通りだと思います。ただ今はデザインの何たるかを正面から捕らえるのではなく、自分にとって身近な素材や工法を追求する過程で、デザインの本質につながる普遍的な何かを見つけられないか、と考えています。
    そのきっかけをつかんだ、とはまだまだ言えないですが、バルセロナでの一年の体験は色んな意味でとても大きな財産です。また、こうして一年離れてみると、あらためて京都の文化のすばらしさを痛感します。これからまた、自分なりのペースでぼちぼちと京都で頑張っていこうと思っています。
    今後とも、どうぞよろしくお願いします。

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