レンガドーム行脚@バルセロナ

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日本から来られた東京理科大学の熊谷亮平さん、筑波大修士の落合さん、バルセロナ在住のレンガ職人谷口達平さんとともにバルセロナのレンガドーム行脚を決行しました。

バルセロナのレンガ建築は、カタランボールト工法(もしくはカタロニア・ボールト工法)と呼ばれる、独特の工法でつくられています。その特徴は特にドームやボールトなどの形状の天井の作り方に現れていて、ローマ時代のようなレンガをサポートする型枠を使わずに、薄焼きのレンガを速硬性のセメントや石膏で固定しながら、丈夫な構造をつくってしまうというもの。

上の図はそのレンガ工法の発展の様子を示した模式図。左がローマ時代の型枠工法、中央が中東やアフリカで発達した日干しレンガを使った型枠無し工法、右は薄焼きレンガを使ったカタランボールト工法。

見学初日は、まずはバルセロナの拡張地区と呼ばれる地域にある工業大学の正門前に集合。ここの建物は今は大学として使われていますが、もとはバトリョ工場といってあのガウディに自邸カサ・バトリョを依頼した資本家バトリョ家の紡績工場だったところ。そしてその建物を手がけたのが、バレンシア出身のレンガ職人ラファエル・ガスタビビーノ。彼はその後、アメリカ大陸に渡ってこのレンガ工法をアメリカに広めています。

ニューヨークのセントラル駅などラファエル・ガスタビビーノの手がけた仕事は今でもアメリカ国内に300以上残っているとのこと。カタランボールト工法がカタルニアというスペインの一地方のローカルな技術でなく、南北アメリカ大陸にも広がる国際的な存在になったのは間違いなくガスタビーノの存在が大きい。

今は教室として使うために区切られていますが、古い資料によるとかつては鋳鉄の柱の上にレンガ造のドームが連続する、大空間だったらしい。

工場は一層分掘り込んだ地下部分に設けられていて、それぞれのドームの天井にはこんな風に天窓がついていた。

その後、谷口さんと合流してバルセロナの職人訓練校、ガウディ・インスティテュートへ。ここでは今でもカタランボールトやエスグラフィアドなどスペインの伝統的な左官工法を学ぶことが出来る学校。谷口さんの出身校でもあります。

まずは典型的なカタランボールト工法による階段を見学。伝統的な工法では15ミリ厚のレンガを使うのですが、ここでは現代の穴あきレンガを代用しています。

現役の教官に色々と具体的な工法のコツをヒアリング。

仕上がるとこんな感じの優美な曲線を持つ階段になる。

敷地内にあったレンガ造のドームも解説をお願いする。

このドームは四本の柱の上に乗っていて、ドームから柱の上部にかかる水平力に抵抗するために、柱の上部をつなぐ鉄筋が見えます。

レンガ造で切り妻屋根を建設する時はこんな風につくる。

その後、谷口さんが親方のジョルディさんと手がけたバルセロナ郊外の街マスノウの住宅を見学に。この建物の上部の増築部分がレンガドームで出来ている。

一辺7m四方の見事なレンガドーム。簡潔な形だけに、ひときわ美しい。また、このドームは断面の形状がどこで切っても同じために、四辺の壁のアーチが決まればガイドも型枠も全く使わずにレンガを積むことが出来るという、非常に合理的な形になっているのですが、その意味がわかるかな?

ここで使っているのは厚さ15ミリの昔ながらの薄レンガ。それを三層に重ねただけの薄いドーム。

建物のクライアントは画家の夫妻で、お二人のアトリエ空間になっている。住宅部分はこの下にある。

美しいレンガの天井。

屋上の屋根の厚みは10センチ弱、防水層も無いですが雨は漏らないとのこと。この現場からは地中海が見えるので、水平器が必要なかったらしい。確かに、水平線と比べてみれば、これほど水平な基準はあり得ないですからね。

その後、谷口達平さんの親方のジョルディさんによるカタランボールトの工事現場を見学に。既存の住宅の庭部分にボールト屋根をつくり、その上を平らに舗装して駐車場にするとのこと。

一層目に15ミリの薄レンガ(手作りなので表情に味わいがある)、二層目三層目は現代の穴空きレンガ、目地を重ならないようにずらして積んでいる。

アーチの形を型板で作り、それを水平に移動させることでレンガの固定する位置を正確に管理している。

今ではバルセロナでもこの工法を知る人は少なく、とても貴重な経験をさせてもらいました。ジョルディさんは出身地であるバルセロナ郊外の小都市マスノウを中心に仕事をしているので、古くからの知人との信頼関係で今でも仕事があるようですが、大都市ではどうしても移民の安い賃金と比べられ、こうした特殊な技能は失われていっています。それでも、50年以上前のバルセロナの建築には、公共建築でも住宅でも基本的にはこの工法が使われているので、この工法を念頭に置いてバルセロナの建築を見ていくとそのデザインの由来がよくわかることが多いのです。

充実した一日のシメは、北バスターミナル近くの「斎心面館Ⅱ」の手打ちラーメン。旧「斎心面館」は違法経営がばれて閉店したらしいのですが、その後その店の隣に「斎心面館Ⅱ」として再出店したというツワモノの店。中国人が詰め掛ける店というだけに、確かにうまいし安い。長期旅行でスペイン料理に飽きた人にはお勧めの店。

One Response to “レンガドーム行脚@バルセロナ”

  1. […] 次に、ラーメン屋じゃないんですが、手打ち麺や餃子などが食べられる評判の良い店を紹介します。この店は、ネットをさまよってこの記事でやっとみつけました。他には、この記事もオススメです。 […]

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