サンタマリア教会@マルコ・デ・カナベセス

*

明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします。
昨年はブログの更新も滞りがちでしたが、今年はもう少しマメにやっていきたいと思っています。
というわけで、まずは昨年見てきたのポルトガル建築の紹介をひとつ。

ポルトガル北部の街ポルトから内陸に一時間ほど電車で走った小都市、マルコ・デ・カナベセスにアルバロ・シザの設計したサンタマリア教会がある。教会は街が広がる小高い丘の北東斜面に位置していて、駅からもその様子がよく見え、徒歩20分ほどかけてたどり着くと、教会は花崗岩の基壇の上に建っていました。

白い直方体のボリュームから円柱状に端部を欠きとったような、独特の外形。

基壇の上にそびえるような北側からの外観とは対照的に、巨大なエントランス扉のある 南側はなだらかな勾配のある敷地がそのまま広場になっていて、人々が招き入れられるように集まることができる。敷地の斜面をうまく使って、建物の北と南に対照的な表情を与え、教会の崇高さと親密さを両立させようとする意図があるのだと思います。

教会の脇に建つ小さな教会は、以前使われていた街の教会のようです。白い漆喰壁を縁取る花崗岩という典型的なポルトガル建築。この素材の構成は、シザ建築のあらゆるディテールにも受け継がれている。

祭日用にだけ開く大きな扉の右横には、通常のミサの時に使われる扉があり、そこから中に入る。低く抑えられた天井の下、小さなホールをへて左に曲がると、教会内部に至る。上部にパイプオルガンの床が張り出しているので、その先にある高い天井がすぐには見えず、歩みを進めるにつれて、その空間に広がりを体験できるようになっている。いつも思うのだけど、シザの空間は写真で見てもどうもその魅力が伝わりにくく、こうして現地を訪れてようやくその意図が分かることばかり。

教会内部に足を踏み入れると、高い天井の全貌が現れると同時に、目線の高さでズバーンと切り取られた超横長の窓から、教会の東側に広がる山並みの景色を一望することが出来た。ポルトガルの強烈な日光を遮るためだと思うのだけど、シザの建築は開口部が最小限に切り詰められていて、非常に内向的な空間であるように見えたりするのだけど、実際にこの空間を歩き回ってみると、要所要所で人間の目線の高さから視界が開けるので、むしろ外とのつながりを強く感じるくらい。

シザの窓についての考え方で面白いインタビューの訳が知人のサイトにあったので、一部を抜粋させてもらいました。(とても興味深いインタビューなので、ぜひ全文読まれることをお勧めします。)

Q: クライアントは大きな窓を欲しがるのではないのでしょうか?小さな窓を創る事を理解しますか?

R: 文句を言う人が多いですね。「美しい風景の前では、それらを見渡す展望台を創るべきだ」と、そう考えているのです。その様な時、私は何時もこう答えます:「それは違う」と。「美しい風景を見続ける事は人間を心から疲れさせるだけだ」と。風景を望む事は「押し付け」になるべきではなく、それを見るかどうかと言う「選択肢」であるべきなのです。

教会の天井は真っ白で巨大な扁平な面。ただその単調さを感じさせない工夫が素晴らしくて、左側の膨らんだ壁が平面のシンメトリーを崩すように食い込んできていること、またその膨らんだ壁に設けられた高窓からの光が、壁の懐で反射させられて天井を照らし出すことで、時間の経過のよって移り変わるような光の表情が天井に与えられている。膨らんだ壁は教会内の音響性能を向上させる意味もあると思うのだけど、片隅に設けられた水盤から落ちる水音が、教会内に響き渡る仕掛けもとても印象的で、シザはこの教会で感じる「音」についてもかなり意識して設計していると感じられた。

かなり質素な素材で作られた教会だけど、世界の数ある教会建築の中でも傑作の一つに加えられていい作品だと思う。シザが今まで手がけた教会が、僕の知る限りこの一つだけ、というのが不思議ではあるのだけど。

シザの建築でよく見られる、扉や窓の水切り石のディテール。こういう、他の国では考えられないような丁寧な仕事がシザの建築だけでなく、ポルトガルの建築のあちこちに見られたのがとても印象に残っています。ポルトガルはEU加入後もそれほど景気が好転しなかったので、地元の職人が移民に職を奪われることも他のEU諸国に比べて比較的少なく、今でも質のいい人材を得やすいからだと聞きました。

そういう話を聞くと、景気の善し悪しは生まれる建築の善し悪しと関係がなくて、むしろ景気が悪いからこそ真に必要な建築について、真摯に考えることが出来るのでは、と思わされます。実際、人口が日本の十分の一、経済規模ではわずか二十分の一のポルトガルから、アルバロ・シザ、ソウト・デ・モウラという二人のプリツカー賞受賞者(建築界のノーベル賞にたとえられる賞で、日本人は過去4回選ばれている)が生まれているのです。

 

← 過去の投稿へ

次の投稿へ →

2 コメント

  1. お久しぶりです。たぶん覚えていないでしょうが、2004年京都建築専門学校で製図の時間にお世話になった小嶋です。エクセル住宅建設にもちょっとだけいました。偶然先生のホームページにたどり着き、びっくりしています。先生のおかげでちゃんと図面も欠けるようになり、2級建築士として飯も食えるようになりました。これからちょくちょくブログを見させて頂きます。お体に気をつけてがんばって下さい。

    • moritakazuya

      ご無沙汰です。覚えてますよ。なんだかんだ言って、やっぱり資格は大事ですね。
      元気に頑張っている声を聞くのはうれしいです。
      お互い頑張りましょう。これからもどうぞよろしく。

コメントを残す