kyoto city : 2000
「繭」は大正末期に建てられた建物で築後約70年を経ている。
敷地は間口約6m、奥行き約50mという「ウナギの寝床」状の細長い形状であり、
典型的な京町家の敷地である。しかし再生前のこの町家は事務所として改築に改築が
重ねられかつての面影はなく、空間的な魅力は全く失われていた。増築部分の解体後は
既存の柱、梁以外ほとんど使い物にならず、まさに骨組みだけの状態であった。
「町家」の跡形も残っていないボロボロの駆体だったが、再生にあたっては他の場所で
解体された町家や修復中の寺院などから古建具や古土、古瓦等を寄せ集めてそれらを
最大限利用して工事を行った。様式やスタイルとしての町家の再生ではなく、色々な
場所に建っていた町家の部品をパッチワークして再生されたのが現代の町家「繭」である。
再生工事は可能な限り伝統的な工法に則って行った。土壁の技術の危機が叫ばれる中、
現在ではほとんど行われない高度な左官技術に若手職人が挑戦している。また建築を
学ぶ学生など多くの人々が、竹の壁下地編みや伝統的な顔料による塗装作業の作業に
参加している。モノだけでなく、貴重な技術の伝承の場として現場は運営された。
企画:建築商会/馬場徹
設計:森田一弥建築工房/森田一弥
施工管理:鈴木健太郎、柳沢究、奥村彰浩
施工:分離発注
建築工事/和田工務店、左官工事/しっくい浅原、
造園/水野稲人、塗装工事他/有志
建物概要:木造2階建町家二棟、木造三階建工場一棟
建物用途:複合商業施設
面積:敷地面積/303.3平米 延床面積/326.7平米
工期:2000年02~08月
標準仕上:
外壁:焼き杉板張り、土壁(鉄粉入り稲荷山黄土水ごね仕上げ、錆土引きずり仕上げ)
内壁:米松縁甲板張り、土壁(中塗り仕舞い壁、大津磨き壁)
床:土間コンクリート金ごて押さえ、杉板張り
天井:既存野地板現し
柱梁:古色仕上げ(松煙、弁柄、柿渋塗布)
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