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ここ数カ月、知り合いも増えパーティーに誘われることも多いお陰で、彼らの家におジャマすることが多い。ヨーロッパの都市は日本のようにワンルームマンションなんてものは無いので、単身の若者はたいてい数人でピソ、日本でいうマンションみたいな場所をシェアして、自分の居場所を確保している。
ここは先日お邪魔した、こちらの大学のマスターに通いながら事務所つとめをしている、宮崎くんのピソ。旧市街にあるにもかかわらず、なかなか日当たりがいいリビングがあり,天井が高く気持ちがいい。
ピソをシェアする場合、もともとの建物がシェアを前提につくられているわけではないから、それぞれが完全な個室を確保しづらい場合がある。このピソの場合も、3人の住人のひとりはカーテンで仕切っただけのスペースを個人の居場所としていた。しかも女性。
大学で建築を学んだ頃は、欧米人の住宅は個人のスペースがそれぞれ確保されていて、日本の伝統的な住宅はプライバシーがあまり確保されていない、なんて聞いていたが少なくとも都市における若者の住まいに対する意識は、日本人の常識からしてもかなり吹っ切れている。ある友人のピソに行った時など、屋上に上がる階段の踊り場にマットが置かれていて、そのスペースにも住人がいる、と聞いておったまげた。
またある友人は、住み始めて一ヶ月経っても居間に行くたびに見知らぬ人を見かけるので、いまだに誰が本当の住人なのか把握できていない、と言っていた。そんな状態でも一つの場所を共有して生活が成り立ってしまうところがすごいところだ。
こちらは事務所の同僚、アメリカ人のマットのピソの屋上。シウタデリャ公園越しに地中海が見えて、バルセロナ中を見渡せる最高の立地。時々昼休みはここへ来て、みんなで屋上のランチを楽しむ。彼はどうも裕福な家庭の出らしく、給料も出ない研修生の身ながら、ひとりでこのピソを借りてバルセロナライフを楽しんでいる。彼は僕と同い年生まれ、大工の心得があり東海岸で古い邸宅のリノベーション事業を手掛ける会社をつくってずいぶん儲けたらしい。あるとき金儲けに飽きて建築家になろうと思い付き、大学で建築を学び直して卒業し、EMBT事務所の前でポートフォリオを持って待っていて、入れてくれるよう談判したという強者。お互い現場の心得があるからか気が合って、道端でみかける建材について色々と教えてくれる。
極めつけは先週、届け物を頼まれて訪問した、ベネデッタの自宅。本人が応対してくれるのかと思っていたらとんでもない勘違いで、何人もいる召し使い(時代錯誤な言葉だが、まさにその形容詞がふさわしい)のひとりが建物を案内してくれた。数百年経っていると思われる既存建物を改修した落ち着きのある内装と、世界各地から集めたであろうすばらしい調度品。ところどころに置かれた室内照明が点々と室内を明るくしていて、、、、こういう生活を形容するには語彙が少なすぎる事を自覚する。やっぱりヨーロッパにはこういう人並みはずれて文化レベルの高い生活をしている建築家がいて、彼らだからこそ太刀打ちできるクライアントがいるんだなあという事実を目の当たりにしました。あまりにも凄すぎて、室内の写真を撮らせてくれとも言い出せませんでした。
ちなみにキッチンのカウンターは、黒いモルタルに赤い大理石とホタテ貝の破片を入れた、人研ぎ仕上げでした。自分の良く知っている素材が使われているのはなんだかうれしい。日本の左官技術も、少なくとも貝のジントギは通用するのだなと。もうすぐクリスマスのパーティがベネデッタの家であるらしいので、その時はちゃんと写真を撮ろう。ここで公開するのは無理かもしれないが。。。。
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