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いままであまり見るべき現代建築に恵まれなかったマドリードも、昨今の建築ラッシュのおかげで、ずいぶんと面白い建物が増えている。
あと数年もすればマドリードだけでなくスペイン各地の都市は21世紀初頭の現代建築の宝庫になるはず。
二年前に完成したマドリードの空の玄関口、バラハス空港aeropuerto barajasはリチャード・ロジャース設計。
波打つ屋根のリズムが気持ちのいい空間。
屋根の内装材には小幅板の透かし張りで、周囲のハイテックなインテリアにもかかわらず、温かみのある雰囲気を演出している。木ってやっぱりいいよなあと思ってしまうのは、世界共通の感覚なんだろうか。
直径1mくらいのパラボラ状の照明。
プラド美術館の真向かいに先日オープンしたばかりの美術館カイシャ・フォーラムcaixa forumはヘルツォーク&ド・ムーロン設計。
既存のレンガ造の建物と上のコールテン鋼で覆われた増築部分の調和と、そのボリュームが一枚の鉄板の上に載って浮いている(ように見える)ファサード表現はインパクトがある。隣の緑化された壁面とあわせて、写真を見てもレンダリングされた画像みたいに見える。
スチールプレートの上のレンガの躯体。
こちらもプラド美術館から徒歩五分のレイナ・ソフィア美術館の増築部分、ジャン・ヌーベル設計。
マドリードの陸の玄関口であるアトーチャ駅は、スペインの大御所ラファエル・モネオ設計。少し歪んだ四角形の屋根が連続するプラットホーム屋根。同じ建築要素を連続させるラファエル・モネオらしい作品。彼の作品はその繰り返しが退屈なだけに終わってしまっている作品も多いが,この駅は成功していると思う。
プラットフォーム横の駐車場。こちらはドーム屋根が連続する空間。
古い駅舎部分は待ち合い空間となっていて、中央に南国の植物をわんさか茂らせている。
その他、マドリードの若手建築家で今一番勢いのあるマンシーリャ+チュノンの最初期の作品のプールも見に行く。モネオの事務所出身の彼らの作品は、さらに小さな要素の繰り返しが特色のひとつ。
プールの内観。
こちらは同じくマンシーリャ+チュノンの古い工場をリノベーションした地域図書館。既存建物のレンガに対し、増築部はプロフィリットガラスとスチールのスリットのファサード。
図書館エントランスホール。
その他にも、マドリードには古いものでいえばエドアルド・トロハの競馬場とか(予約をするか競馬のある日しか入れないので注意)、最近ではMVRDVの集合住宅とか、スペインの若手建築家のものも含めるとかなりの数とレベルの現代建築があり、いままではマドリードを素通りしていた建築目当ての旅行者も数日滞在するようになるはず。
マドリードにも春が来ています。こちらの春の花といえばアーモンドの花。
野生の木は古い実が枝についたまま新しい花を咲かせている。
M.Takebe
庭を造る者として、カイシャ・フォーラムの隣の緑化された大きな壁面が大変気になります。構造や植えられている植物がアップで映っている写真があれば、掲載していただくと大変ありがたいです。
大阪もこのところずいぶん暖かく、サクランボの花が咲きかけています。染井吉野の開花予想も3月末ごろだそうです。
梅村@静岡
13年ほど前に訪れたマドリッドの街を懐かしく思います。当時バラハス空港は、けっこう古い感じがしましたが、2年前に改築したのですね。アトーチャ駅の熱帯雨林のような雰囲気に、当時ほんとにびっくりしました。
morikazu
武部さん
あの壁面の詳しい写真は撮り忘れたのですが、壁に取り付けた分厚いフェルトのような生地に、縦横40センチおきくらいでカンガルーのポケットのような袋があって、そこに土を入れて植物を生やしていました。金沢の21世紀美術館にも、同じような緑化壁面がありましたよ。
morikazu
梅村@静岡さん
13年前というと、まだまだスペインの物価が安くて、ちょっと危険だった頃ですね。アトーチャ駅の温室は、むしろ新しい駅部分よりも評判がいいです。ヨーロッパの首都のメインの駅で、あのゆったりとした空間の使い方は、土地の高い日本ではなかなか真似できないでしょうね。
横井@静岡
先日はうっかり梅村(現姓)@静岡でコメントしてしまいました。
13年前、学生時代に訪れたマドリッドは、かなりピリピリした緊張感漂う雰囲気の街でした。アトーチャ駅で合流した通訳の方からも、「熱帯雨林の温室に見とれている間に、荷物を盗難されるケースが多いので気をつけるように」とまず最初に言われました。
マドリッドの中心地の交差点にある郵便局(白亜の芸術的な建築物)に行った際もかなりピリピリムードでしたが、その緊張感ゆえに、白亜の郵便局が凛々しく見えた覚えがあります。(王宮に行った際も同じような印象があります。)