夏頃から調子がおかしかった自宅の地下水汲上げ用のポンプがついに故障。うんともすんともいわなくなった。そんなときに限って打ち合わせの予定が連続していて、自宅にいられない。ポンプのメンテナンス会社も都合が付かない。その日はちょうど雨降りだったので、家族には雨水を浴槽にためて、その日の生活用水としてしのいでもらう。
翌日、なんとかポンプ整備の技術者さんがきてくれて、いくつかの部品を取り替えて無事にポンプは復旧。水が無いと本当に困る(もちろん電気も)ということを痛感した、我が家のプチ災害体験。

4日は我が家の次男坊の次郎(そのまんまですみません)の誕生日で、自宅でささやかにお祝い。お手製のケーキと彼らの好物のゴルゴンゾーラのパスタと。長女からのプレゼントをあける次郎。
その日の夕方、彼は保育園から帰ってきて、「今日は僕の誕生会がなかったよ。」とちょっと残念そうに我々に報告してきた。日本のたいていの保育園は月の終わり頃にまとめて、その月生まれの子供の誕生日会をする。そんな彼には「また別の日にお友達と一緒にするんだよ」と説明しておいた。

彼がそう言いだしたのには思い当たる理由がある。彼が一年通ったスペインの保育園では、誕生日会はきちんと誕生日その日に子供一人一人のために時間をとって祝ってくれていた。誕生日を迎えた子供はケーキとプレゼントを自宅から持参して、切り分けたケーキをみんなに配って回る。写真は配られるケーキを待ち構える子供たち。
我が家は前日に先生が「ケーキ(パスティージャ)を持ってきてね」といわれたのをパステルと勘違いしてクレヨンを持っていくという失態をやらかしたが、先生はにっこり笑って「トランキーロ(心配しないで)」といい(スペインで頻繁に耳にした言葉の一つ)、ちゃんと彼のために自らケーキを用意してくれた。さらに先生は紙で作った誕生日の冠を作ってくれたり、ちょっとしたプレゼントを贈ってくれていた。なんとも印象に残るスペインでの初誕生日体験。言葉は忘れてしまいつつある次郎にも、自分や友達が迎えたそんな誕生日が、強く印象に残っていたらしい。

ちょうどその頃在籍していたEMBT事務所でも、何度か白昼堂々勤務時間中にスタッフの誕生日のお祝いが開かれた。特別甘いチョコレートケーキとスペインのスパークリングワイン「カヴァ」が振る舞われて小一時間ほど談笑したり、そのまま仕事が終わってしまったことも。誕生日を「別の日にまとめて」祝おうっていうのは、彼らの考え方には存在しないようだ。誕生日はその日に祝わなければ意味が無い、だってその日が誕生日なんだから、ということなのでしょう。
学校や仕事場での時間が、こうした個人的なことに費やされてしまうのは仕事をプライベートをきっちり分けるべきと考える人(かつての僕のように)にとっては我慢ならないことかもしれない。だけど学校や事務所で出会った人たちは仕事中であろうと、こうしたプライベートな出来事を当然のように優先する、そんなことがとても新鮮だったのを思い出した。しかもたいていの場合は学校と同じように誕生日の本人がケーキを用意してパーティの会場を借りて、さあ、みんなで楽しみましょう!という感じなのだ。
ということで最近は我が家でも、誕生日を「その日」に祝う、しかも自分で率先して、というのを家訓にしようと考えている。