久しぶりに奈良に行く。ついでに東大寺にも足を伸ばす。15年ぶりくらいの訪問だ。

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南大門の差し肘木。豪快だ。
大仏殿の正面に立って気がつく、これは日本のタージマハルではないか。お墓じゃないけど。
奈良町の町家では久住氏が「おくどさん」、竈の仕上げ工事をやっていた。
赤の大津磨き。
現場に到着した時点で、下塗りの灰土がきれいに塗られていた。
そこから上塗りの赤いノロの塗り付けを開始。
焚き口の部分など、形の複雑な部分はコテを使わずに指で塗り付けている。
塗り付けて、厚さを均等にならして、コテで圧力をかけていく。
表面にだんだん光沢が出てくる。
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仕上がった様子。きれいに全体に艶が出ている。
傍目にはすんなり仕上がったように見えても、彼らの施工手順や塗り付けている材料の配合に積年の研究と経験から得たノウハウが秘められているからだ、というのはやった者しかわからない世界。特にこうした立体モノの磨き仕事は難しいのだ。だからこそ、モロッコの道端で漆喰磨きをする職人と出会った時に、飛び上がるほど驚いたのだが。
最後は東大寺の近くで見かけた土塀。奈良には土の素朴な表情を生かした魅力的な土塀がたくさんある。先ほどの繊細な大津磨きの表情も、こうした素朴な表情も、どちらも土に人間が手を加えることで生まれている、というのが面白い。