砂の左官壁@内モンゴル自治区

10月12日から16日まで、中国内モンゴル自治区オルドス市がリゾート地として開発している砂漠に行ってきました。それほど極端に雨が少ない場所ではないのですが、地質の関係か、川をこえると突然この写真のような砂丘が見渡す限り広がっています。
国内旅行ブームに沸く中国各地から、この砂漠の景観を楽しみに大勢の観光客が訪れていている。砂漠を歩き回って靴が砂だらけにならないように、ほとんどの中国人はこのミッキーマウスがはいているみたいなお化けソックスを履いているんだが、ちょっと間抜けで笑える。
砂漠の中に建設中の、ホテル。鉄板でつくった壅壁の砂止めの上に軽量鉄骨造の平屋の建物が段々状に建つ。とはいえ、まだ基礎工事が終わったばかりなのに、来春完成予定という信じられないスケジュール。
まずはクライアントの社長と重役に会い、持参した左官壁のサンプルを見てもらう。白セメント系、漆喰系、土系それぞれのサンプルを見せて意見を聞くと、砂漠のイメージを壁にしたいので、ワラが入っているようなテクスチャーはあまり相応しくないとのこと。右はホテルの設計を担当している前田さん。
その後、ノートパソコンの画面で僕の日本での仕事を見てもらう。Concrete-PodとかSAKAN Shell Structureなどの、左官ドームに興味津々。すぐにでも何棟か建ててくれと言われそうな勢いだ。
その後、砂漠を見に行く。砂漠の砂って本当に粒子が細かくて、わずかな風でも砂が壁に舞って、綺麗な風紋を描いていく。
風紋の形には色んなパターンがあって、見ていて飽きることが無い。
砂の粒子が想像以上に細かくて、土や石灰で固めてしまうと砂の質感がほとんど失われてしまうように思えたので、まずは日本から持参した粉末糊と砂を練って壁に塗れるような状態にしてみた。日本でいう、「砂壁」と呼ばれる仕上げにあたる。
鏝板で様子を見てみると、砂の質感も失われずに色の違う個々の砂の粒子もよく見えて、いい感じだ。
サンプル用に石膏ボードに塗り付けてみる。砂の粒子が一定に揃いすぎていて、結構塗りにくい。もう少し糊の配合を変えないと、大きな壁は難しそうだ。
また、下塗り用の石膏系の塗り材も中国では手に入らなさそうなので、普通の焼き石膏を持ってきてもらって、骨材やメチルセルロースなどを混ぜて左官材料として使えるように調整してみる。今回一緒にオルドスへ来た、前田さん、河村さん、國廣さんはみな実務経験も豊富で現場慣れしていて、特に指示しなくてもこまめに動いて下さるので、作業がはかどって調合と仕上げを変えたサンプルをどんどん量産していく。
砂漠の強烈な日光の下に置いて、乾燥させてみる。
砂漠の砂を使った砂壁の乾いた状態はこんな感じ。
粉末糊ではなく、日本から持参した土を使って砂を固めてみた。やはり砂の質感が失われて、土の印象が強くなってしまうのでNG。白セメント系のサンプルも同様。
食事はもちろん、中華料理。内モンゴルは羊肉を使った料理が多い。麺が手打ちで、コシがあっておいしい。そしてヨーグルトも味が濃くておいしい。食べ物がうまいと、仕事もはかどる。

小さなサンプルを社長に確認してもらって、やはり一番印象の良かった砂壁を中心に、大きめの壁を塗ってみる。中国の不慣れな職人を想定するため、前田さん達にも塗ってもらって作業性を確認し、調合を微調整する。
日本から持参したステンレス鏝(ごて)で、表面を整える河村さん。
砂壁表面に意匠的な変化をつけたいとのことだったので、鏝で模様をつけてみた。これは職人の感性が問われるので、難しい作業になるだろう。
これは、小石まじりの砂が風に吹かれて、小石が砂の表面に現れて出来た表情。
三日目の夕方にようやくに顔料が手に入ったので、砂の色に似せて白セメントを顔料で着色して、小石まじりの砂と練り合わせて、洗い出しのサンプルをつくる。
最終日に、社長はじめスタッフの方達と仕上げの方向性についてディスカッション。

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社長は砂壁のサンプルを気に入ってくれたようで、これで何とか現場を進めることになりそうだ。左官仕上げになる予定の壁面は、なんと9000平米。現地の職人だけでうまく仕上がるか不安は尽きないが、来春の完成までに何度か中国に通って、調合の調整をしたり、技術指導をしたりする予定。
京都で学んだ左官の技術が世界の色々な風土や価値観、素材や職人と出会って、その地域固有の色々な建築の可能性を花開かせていく現場に立ち会えるのは、本当に面白い。

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1 コメント

  1. こんばんは。面白く楽しそうですね。現地のごくありふれた素材が、ジパングからもたらされた料理法で、新たな表情を得るなんて、数千年来、多様に多彩に、今も変わらず伝播するのヒトの歩みを目の当たりにするようで、ワクワクしますね。もう、そろそろ日本にお帰りですか。気を付けて帰って来てください。

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