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アーヘン大学で三十年前から行われているという日本の土壁セミナー。同大学の教授だったマンフレッド・シュパイデルさんが、今や左官職人のカリスマといってもいい若き久住章さんを日本から講師として招いたのが30年前、それからずっと続けられている伝統あるセミナー。

セミナーの敷地は自然に囲まれた気持ちのよい林の中。学生たちが実習で建設した20くらいの建物が散らばっている。まずは敷地内の建物の紹介を。

セミナーの初期に建設したという日干しレンガのドーム。

イランにいるような気持ちになる。

日本のお茶室のような東屋。

二階建ての建物もある。

色とりどりの塗り壁。

茶室風の下地窓も。

黒漆喰の磨き壁は今でも光沢が消えていない。

土壁に鉄粉を入れて仕上げた「蛍壁」も。日本の土壁セミナーでもここまで特殊な仕上げは教えない。うーん、ここまでやるか、という感じ。

土壁の洗い出し仕上げ。

「蔵」と書かれた梁の上に磔になったキリストの像?

土の人面細工。いい造形センスですな。

セミナー参加者はアーヘン大学の学生を中心に25人、四つのグループに分かれて春先から下地を編んで荒壁を塗る、という作業を続けてきて、このセミナーがいよいよ最終の仕上げ。

マンフレッドさんが講師の都倉達弥くんを紹介しています。初代の久住さんの後は、久住さんの弟子である大分の原田進さんに講師が引き継がれてきましたが、都倉くんは原田さんの弟子で三代目の講師、今年で三回目の参加になります。まだ弱冠25歳の若手職人ですが、サッカーで高校総体に出場したという運動神経の持ち主、左官のセンスも良さそうで、外国人に物怖じせず英会話もこなし、酒もヨーロッパ人に負けずよく飲む。昨年九月からワーキングホリデービザでマンフレッドさんのところに滞在中で、ヨーロッパやアフリカの土の建築セミナーを飛び回っている、新世代の左官職人。僕は都倉くんの補佐役のような形で参加させてもらいました。

セミナーで使う土は、現場で取れる土を篩にかけたもの。

藁は動物の飼料用の麦わら。

鏝はなんと「こて梶」こと今は亡き梶原敏孝さん(兵庫県三木市)作の半焼の鏝がずらり。伝説の鏝です。

材料の調合を決めて、練り作業を開始。

まずは鏝板に材料を取り、鏝に土をのせる練習をしてもらう。マンフレッドさんはもう慣れたもの。

それなりに時間はかかりますが、さすがドイツ人、几帳面でけっこう平坦な面にしあげてしまいます。

ランチはいつも現場で焼いたソーセージをパンに挟み、野菜をつまんで食べる方式。ドイツのソーセージがうまいのなんの。

初日はマンフレッドさんの誕生日を祝ってケーキも振る舞われました。

翌日から漆喰の仕上げ作業も開始。

早稲田大学からバルセロナに交換留学に来ている渡部くんも飛び入り参加、「無心」の手ぬぐいを巻いて無心に作業を続けています。

大津磨きの仕上げ作業も始まり、壁面に光沢が現れ始めるとみんなもう夢中で鏝を当てています。

土は現場の土、石灰はヨーロッパの消石灰ですが、とにかくよく光ります。材料の収縮率が高く、ひびが入りやすいので、薄塗りして仕上げるのがコツ。

最終日はセミナーの会場でそのまま打ち上げのパーティ。楽しかった三日間のセミナーが幕をおろしました。

ヨーロッパ、特にドイツでは麦わらを固めてつくったブロックで建てるストローベイルハウスに興味のある人が多く、その表面の仕上げに使える土壁に興味のある人がとても多いようでした。また、ヨーロッパの版築建築の第一人者であるマルティン・ラオホさんのところでインターンを経験した人など、色々な人がいて、ヨーロッパの土の建築について色々な情報交換ができたのが大きな収穫でした。

 

最後に、期間中お世話になったマンフレッドさんの自宅の食卓。毎朝頂く美味しいパンとジャムが忘れられない。