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ネパールから帰国してしばらく経ってしまいましたが、現地での活動報告を少し。
今回の話は、スペインで現地のレンガ工法を色々と調査している時にアジアのどこかの国でこの工法を生かせるのではないかと思い立って、京都大学の布野研究室に同時期に在籍していたネパール人のモハン・パントさん(現在カトマンズの大学の教授を務める)に連絡をしてみたのがきっかけ。数ヶ月してパントさんから「いい敷地が見つかった。一度ネパールに来て欲しい」と連絡があり、急遽この11月に訪問することにした。
現地はカトマンズ郊外の集落にある、この地域の住人のための授産施設+診療所。もう30年近く活動を続けてきているのだが、この地域の人口が増え続けて需要が増えつつあり施設を拡張したいのに、既存の建物が老朽化して修繕もままならないという。この地域の建物は鉄筋コンクリートも一部使われているものの、主要な建材はレンガ。スペインの工法を使うメリットも十分にありそうだ。
現地では村長さんはじめ診療所の主要メンバーが集まって下さっていて、現状のヒアリングをパントさんと一緒に行いました。
ひととおり施設の現状についてヒアリングをしたあと、敷地の状況を確認。
敷地は南に開けた高台にあり、周辺の山々や棚田が見渡せる気持のよい場所。
敷地のすぐ隣にあった中学校を見学に行く。校舎の一つは、日本の団体から寄付されたもののようだったが、本来は別の場所に建てられる予定だったものが、事情があってそこに建てられなくなり、この学校に急遽建てられることになったそうだ。そのせいか、建物は裏山の崖が迫る敷地の隅っこに建てられていて、日当りも悪く、室内環境も良くなさそうな印象。
これは別の村で見かけた小学校の校舎だが、途中で寄付金が足りなくなったのか、工事途中で放置されていた。このように、ネパールでは海外の団体の寄付による学校や病院の建設事例は多いのだけど、お金を渡すだけでろくに管理もせず、建築のプロも関わらないことが多いために、建設される建物のデザインも施工品質も悪く、ひどい場合はお金が現地にきちんと届かず、施設が完成しないことも多いという。
「援助した」ということだけで自己満足して、プロジェクトを最後まで見届けない中途半端な団体が少なくないこの現状は、同じネパールに小学校を建設した竹中工務店の設計部の有志を中心としたAAFの方々も指摘されていたことである。この診療所のプロジェクトが実現できるなら、建築家として恥ずかしくない質の高い建物にしたい、と強く思わされた。
このプロジェクトは(当然のことながら)未だ予算の目処もついていないので、日本の大使館が途上国に向けて行っている補助金申請手続きについてネパールの日本大使館も訪問して、ヒアリングを行った。まだまだ先は長いプロジェクトになりそうだが、少しづつ歩みを進めていきたい。
その後、カトマンズの郊外に建設中の、パントさんの自邸の工事現場も訪問させて頂く。
延べ床面積200平米と、かなり大きい住宅。階を積み上げただけの単調な構成がほとんどのネパールの住宅には珍しい、吹き抜けや屋根裏部屋のような個室など、なかなか変化に富んだ内部空間。パントさんによるともう着工して二年経っているそうですが、あと数ヶ月で完成の予定だそう。窓からはのどかなカトマンズ郊外の田園風景が眺められる気持のよい家になりそうで、完成したあかつきには研究室のOBOGはカトマンズを訪問したら必ず押し掛けるべし、ですね。
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