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バルセロナ市が主催し、市内の古建築からモデルニスモ、最新の現代建築まで普段は見られない160もの建築を市民に公開する「48H OPEN HOUSE BARCELONA」という企画が10月22.23日にかけて行われました。入場料が無料というのもありますが、この日は市内各所に長蛇の列ができていて、バルセロナ市民の建築への興味の高さが伺えます。我々一家は、アントニ・ガウディの設計したサンタ・テレサ学院(Colegio de Santa Teresa de Jesus, 1888-1890)に狙いを定めていざ出陣。
早起きしてオープン時間の30分前に現地についたにもかかわらず、門の前にはすでに長い列が出来ている、ガーン。だいたい休日の前日は夜更かしして楽しんで、翌日は昼間まで寝ているのが基本的な生活パターンのスペイン人が建築を見るためにまさかここまで早起きするとは。。。スペイン人の行動パターンが読めて来たと思っていた矢先に、軽く予想を裏切られる。
一時間ほど待って、なんとか入場。
レンガ積み柱型にその間を乱石積みで埋めた外壁。安価な材料で構造がそのまま仕上げとなる経済的な設計が意図されている。いいじゃないですか。
この建物は、当初は他の建築家が手がけていたが、建設が二階に達するころにガウディが設計を受け継いだらしい。当初道路側にあった正面玄関の位置をガウディは正面に見える庭に面した位置に変更したとのこと。
このテレサ学院はガウディの作品の中ではイスラムの影響の強い初期の作品から構造合理主義的な作風に移行する中期の作品で、レンガの懸垂アーチがデザイン要素として初めて繰り返し使われたことが特徴的な、重要な作品。
エントランスの形もさっそくアーチ型。玄関の門扉は練鉄製、中央の星と十字架は修道会の紋章にあるモチーフ。
一階中廊下。今日は雨模様だったので暗く感じるが、普段のスペインの陽光があれば、十分明るいと思われる。
壁上部のレンガの持ち送りは二階廊下部分の柱を支持している。
一階に光を落とす、二階中庭の採光窓。
一階廊下の枝分かれした突き当たりには、後にグエル公園で使われる螺旋状のレンガ柱が。
螺旋の形というのは、直線材を基本とする木造の感覚だととんでもなく大変に感じるが、レンガ造にとっては正方形の平面を少しづつ回転させるだけで簡単につくることができる。そのまま上部のアーチを支えている。
一階の図書室。窓の開口もアーチ。内側にある建具は長方形。天井は、鉄骨梁の上にレンガをボールト状に積んである、カタランボールト工法。
階段とエレベーター。なぜかここの窓枠は五角形。エレベーターってこの時代からあったのかな、と思いつつ二階へ。
エレベーターを囲むように階段が回っている。
エレベーターを降りると正面に現れるキリストの像と列柱ホール。階段を上がった正面でなく、エレベーターの正面に配置してあるのが、ミソ。ガウディの現代的な価値観を表している。
具象的素材であるレンガが地面から立ち上がり、2mほどの高さで一転して抽象的素材である白い石膏アーチに切り替わる、その緊張感がいい。キリストの像はレンガの台に立ち、天上から地上に降りて来た天使のようにレンガのレイヤーに配置されている。
床はレンガ色のタイル。2タイプの形のタイルでパターンを構成している。
ホールに出て、横を見ると廊下に連なる懸垂アーチの列。圧巻の建築体験。
レンガでつくったアーチに、石膏で白く仕上げを施してある。
廊下の突き当たりにもうひとつ列柱ホールがある。
この列柱ホールの柱はわずかレンガ一個分のスレンダーなプロポーション。柱頭部分のディテール。
窓部分のディテール。水切りに床と同じタイルを使用。内側にガラス窓、外側にはスペインではおなじみの日除けの水平格子窓。
廊下の片側に教室、反対側に光採りをかねた小さな中庭。
中庭の一部に一階への採光窓も。
という感じで、中に入ると一通り解説があったあとは、それぞれ自由に見てまわって写真撮影も自由、じっくりと建物を堪能できる素晴らしいオープンハウスでした。この建物は今でも現役で校舎として使われているため、普段は見ることが出来ません。早起きして来た甲斐がありました。
その後、ガウディの片腕だったジュジョールの集合住宅に移動したものの、お昼過ぎにして既に一日の定員がいっぱいと言われ、閉め切られていて残念無念。スペイン人、休日だからといって寝てるばかりじゃないぞ、という貴重な教訓を得た貴重な一日でもありました。
Saito Yoshimi
カタランボールドを調べていて、Blogに行き当たりました。Gaudi大好きなので、見学会羨ましいです。放物線アーチの廊下、体験してみたいです。