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スペインの建築誌 Arquitectura Viva を図書館でパラパラ見ていたら、ある号の表紙に目が釘付けに。

アフリカらしき国の女性が土壁のに向かって作業しているように見える写真で、手元をよく見ると黒い石が。つまり石を金属製の鏝(こて)の代わりに使って壁を平らに仕上げているのです。

おお!これはまさしく数年前にモロッコで見た、石で磨いて仕上げる漆喰「タデラクト」と同じ。モロッコだけじゃなく、アフリカには今でもあちこちに石を使って壁を仕上げる技術が残っているのですね。

「石の鏝」に僕が注目するのは、それが金属製の道具が生まれる前、非常に原始的な左官技術の名残だと考えているからです。例えば5000年前のエジプトのファラオの墓の壁画の下地の漆喰壁も、石の鏝で仕上げた可能性が高い。平らな金属の鏝は平らな面は効率よく仕上げられるのですが、曲面となると途端に使いにくくなります。そして、実際に作業してみるとよくわかるんですが、石の鏝ってのはいろんな曲率の面が周囲にあるので、平面も曲面もどんな面でも対応できます。つまり、原始的な道具というのは実は万能な道具でもあるのです。

この壁塗り作業をしているのは、ブルキナファソの学校建設のプロジェクトの現場で、ブルキナファソ人でドイツで建築教育を受けたフランシス・ケレという建築家の仕事。昨年夏に滋賀県立大学で建設したドームと同じく、ソイルセメントレンガを使って建設されていて(同じセメントレンガとは思えないほどレンガの色が違う!)、天井部分にはカタランボールト工法とよく似た工法でボールト状にレンガが積まれています。スペインで僕が色々と興味を持っているレンガボールトが今でも世界のあちこちで使われている好例、勇気づけられます。